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酢には黒酢やバルサミコ酢、リンゴ酢、ワインビネガーなどいろいろな種類がありますが、そのなかでも日本で馴染み深いものと言えば米酢ではないでしょうか。

 

日本にお酢の醸造方法が伝わってきたのは4~5世紀ごろだと言われており、稲作農業が盛んな日本では米を原料とした米酢が古くから作られ、料理に活用されていたとされています。

 

一方で、米酢ほど長い歴史を持ってはいないものの、昔から日本で良く用いられている酢がもう1種類あります。

それが酒粕を原料にして作る「粕酢」です。今回はこの粕酢の歴史や特徴、作り方などを詳しく紹介していきたいと思います。

 

粕酢の歴史は江戸時代から お寿司と切っても切れない関係にあった?

 

粕酢は酢の大手メーカー「ミツカン」の創業者である初代中野又左衛門により、江戸時代に製造が開始されました。

 

当時江戸では、塩漬けした魚をお米と一緒に長期発酵させた「熟れ寿司」に少々酢を加え、発酵を進めた「半熟れ寿司」という押し寿司がブームになっていたそうです。

そのブームを聞きつけ「半熟れ寿司」を江戸で口にした初代中野又左衛門は、米酢よりも自分が作っている粕酢の方がこの「半熟れ寿司」に合うと確信し、酒造業のかたわら本格的に粕酢造りに励むようになっていきます。

 

当時はタブーとされていた粕酢造り

実は江戸時代では、酒造家が酢を作ることはタブーとされていました。

酒と酢は相性が悪く、酒樽に酢の元となる酢酸菌が入ってしまうと酒がすべて酢になってしまうからです。

 

しかし初代中野又左衛門の粕酢づくりは見事に成功し、徐々に評判を集めていくようになりました。

 

その頃、現在の握り寿司の原型となる生魚と米酢を用いた酢飯を握った「早寿司」が江戸でブームを巻き起こしていましたが、当時まだ米酢は高価なものでした。

その流行を知った初代中野又左衛門は、米酢ではなく粕酢を使えばもっとおいしいお寿司を作れるのではないかと考え、江戸で粕酢の販売を開始していきます。

 

すると粕酢が寿司飯に合うと評判になり、人気のお寿司屋さんが次々と粕酢を使うようになったそうです。

 

現在も江戸前のお寿司屋さんでは、寿司飯によく粕酢が使用されています。

 

酒粕から酢を作る方法とは

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長期間じっくりと貯蔵・熟成させた酒粕を発酵させて作られるのが粕酢です。

 

具体的な作り方は、まず酒粕を2年以上熟成させていきます。

こうすることで酵母が酒粕に含まれているタンパク質をデンプンや糖に分解していくため、全体が琥珀色に変化します。

次に、そこに酢の元となる酢種を加え、3年以上かけて熟成させると粕酢の完成です。

 

ちなみに酒粕を3年以上かけてじっくりと熟成させ、これを蒸留すると高級焼酎として知られる「粕取り焼酎」が出来上がります。

 

熟成させて作る粕酢はほんのりと赤い薄茶色をしていることから、「赤酢」と呼ばれることもあります。

お寿司屋さんに行って赤みがかかったシャリが出てきたら、粕酢を使用している可能性が高いと言えるでしょう。

 

現在は砂糖や化学添加物を加えたシャリを使用しているお寿司屋さんも多いそうですが、粕酢と塩のみで作った伝統的なシャリは固くなりにくく、口の中でぽろぽろとほどけるという特徴があります。

 

また、酸味も程よくあるので、脂がのっている魚によく合うと言われています。

 

粕酢の特徴とは?

粕酢には、家庭でもよく使用されている米酢と比べるとさまざまな特徴があります。

具体的に見ていきましょう。

 

粕酢は米酢と比べて酸味がまろやかで旨みが強い

長期熟成させた酒粕には100種類以上ものアミノ酸が含まれています。

その酒粕から作られる粕酢にも旨み成分であるアミノ酸が豊富に含まれるため、酢独特のツンとした感じがなくまろやかで、米酢よりも旨みが強いのが粕酢の大きな特徴です。

 

実際に粕酢の場合、酢そのものにしっかりとした旨みがあるので、料理に使うとひときわ奥深い味に仕上がります。

 

また、先ほども紹介したように熟成させた酒粕から作られるため、ほんのりと赤い薄茶色をしているところも粕酢の特徴のひとつです。

そのため、調理に用いると、食材がほんのり赤く色づきます。

 

アミノ酸やクエン酸が豊富 

粕酢には先ほども紹介したように、うまみ成分であるアミノ酸が豊富に含まれています。

アミノ酸は100gあたり穀物酢で50~80mg、米酢で100mg程度含まれていると言われていますが、粕酢には米酢の2倍にもなる200mgも含まれていることが分かっています。

 

また、粕酢にはクエン酸も多く含まれているので、疲労回復や、疲れやすい身体をサポートしてくれる効果も期待できます。

 

粕酢を使用するなら寿司飯や酢の物がおすすめ

 

粕酢は旨みが強く、酸味もまろやかなので、寿司飯や酢の物など酢そのものの味が楽しめる料理にも適しています。

 

また、粕酢はにおい成分として知られるダイアセチルの含有量が少ないことが分かっているので、酸っぱい匂いが苦手な方にもおすすめです。

現在はいろいろなメーカーから粕酢が販売されているので、ぜひ美味しいと思うものを選んで日々の食生活で活用してみてください。

 

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