福岡県指定の景勝地・白糸の滝が流れる羽金山。豊かな自然と清らかな水に恵まれたこの山の、地下250mから掘り起こした岩盤地下水を仕込み水として使用しています。
原料となる米は地元糸島産「山田錦」。心白が大きく、大粒でしっかりとした酒造りに最適のお米です。口に含んだ時に鼻からフワッと抜ける上品な香りが特徴で、お酒にほどよい甘さとまろやかな香りを醸します。
「ハネ木搾り」とは、てこの原理を用いた昔ながらの上槽法です。
1つ40キロ〜100キロを超える巨石を一つずつハネ木にぶら下げていき、お酒が入った酒袋に徐々に圧をかけ、最大1トンを超える重しでゆっくりともろみを搾ります。
全国的に機械搾りが主流となった昨今、「ハネ木搾り」の手法でお酒を造り続けている蔵はほとんど現存していません。
重労働かつ搾りに時間がかかるため、大量生産に向かない「ハネ木搾り」。しかしその手法でお酒を造り続けることは、品質を守る上で絶対に譲れないこだわりだといいます。
「ハネ木搾り」は自然の圧力で搾るため、もろみを最後まで搾り切ることができません。搾り粕が厚く残りますが、その分雑味が残らずまろやかで、すっと喉を通る味わいが生まれるのです。
一押しは「白糸55」。糸島産山田錦を55%精米して造られる純米吟醸です。まるでワインのように飲みやすく、しかし決して料理の味を邪魔しない上品で軽やかな香り、すっと体に沁み入るような喉越しで、食中酒にぴったりのお酒です。「白糸35」は芳醇でフルーティな香りが魅力的。こちらは食前酒におすすめです。ハネ木搾りが実現するまろやかな味わいをぜひご堪能ください。
「四里四方に病なし」ー自分の身の回りで育った食材を食べることで、健康でいられるという諺があります。白糸酒造のお酒に合う食べ物を7代目 田中信彦社長に伺ったところ、「この諺にあるように、ぜひこの地域の旬の食べ物を楽しみながら白糸酒造のお酒もご一緒に味わっていただければ」と語ってくださいました。
地元福岡から全国に人気を博した「田中六五※」を筆頭に、ますます全国人気がやまない白糸酒造。あまりの人気に生産が追いつかず、問屋では欠品が続く日も。今後は安定供給が課題だといいます。
7代目 田中信彦社長:「これまで東京で流行ったお酒が福岡に来ることはあっても、逆はなかなかありませんでした。それが今、地元糸島市で造る白糸酒造のお酒が全国の方に求められていますから、ありがたいことです。」
「しかしハネ木搾り一本では生産が追いついていない現状があります。そこで現在二本目のハネ木を仕込んでいる最中です。これから量産の体制を整えていきます。福岡の定番酒として、みなさんの日常に寄り添うお酒になれるとうれしいですね。」
築100年を優に超える木造の蔵と最新設備が交差する作業場は全く新しい雰囲気で、「古き良き伝統」を大切にしながらも「必要な最新の技術」を率先して取り入れていく、白糸酒造の酒造りへの情熱を感じるとても印象的な光景でした。
この土地で育まれてきたお酒の味わいを引き継ぎ、さらに進化を重ねていく白糸酒造のこだわりに、これからもきっと多くの人が魅了されていくことでしょう。