明治28年に久留米市城島町で創業し、100年余りの歴史を刻んできた比翼鶴酒造。
代表銘柄である「比翼鶴」は地元でその名を知らない人はいないほど、長年地域に親しまれてきた銘酒です。
比翼鶴酒造・常務取締役 二ノ宮 啓輔さん(以下、二ノ宮さん):
「比翼の鶴とは、雌雄一体となって飛ぶ夫婦鶴のことです。この名前が表すように、私たちの造るお酒が皆様の日常にそっと寄り添い、めでたい日もそうでない日も、大切な誰かと酌み交わしていただけるお酒であってほしいと思います。」
酒造りの盛んなこの土地で、『やっぱり比翼鶴さんの酒がいい』と言う地元の方もいると聞きます。
「照れますが、そう言っていただけるとうれしいですね(笑)
私たちは昔ながらの素材と製法に忠実に、変わらない味を造りつづけています。地元の方々に、リーズナブルで美味しい日本酒を安定してお届けし続けることを目標にしています。」
銘酒「比翼鶴」は縁起の良いものとして「ハレの日」–特別な日– に選ばれるお酒でもありますが、「ケの日」–普通の日常的な生活– にも寄り添うお酒であるといいます。二ノ宮さんにとって“日常に寄り添うお酒”とは、どのようなお酒のことでしょうか?
「比翼鶴は日常酒として、熱燗や冷酒、どのような飲み方をしても美味しく飲めるように設計しています。しっかりした酒質で味わいにクセがないので、多くの方にとって飲みやすいと感じていただけると思います。飲むだけでなく、料理酒としてもすごくおすすめです。」
料理にも使って良いのですか?
「はい。例えば、ご飯を炊く際に少し日本酒を加えると香りが立ち、甘みが増してふわっとした仕上がりになります。お魚やちょっとした煮物にも、日本酒とお砂糖とお醤油で美味しい一品ができます。保管は暗所であれば常温で台所にドンッと置いていただいてかまいません。ぜひ、普段のお料理にも活かしていただきたいです。」
銘酒「比翼鶴」は安定した美味しさと手頃な価格から、お祝いごと・晩酌・毎日の料理にと、この土地に住む人々の暮らしのあらゆるシーンに溶け込み、地域になくてはならない存在になりました。
地元の方々の“日常に寄り添うお酒”として、手の届きやすい価格で、いつでも手に入る銘柄であることも大切だと語る二ノ宮さん。その酒造りのこだわりをお聞きしました。
「原料は主に、安定して調達できる地元の素材を使っています。お米は地元の福岡で育ったもので、水は筑後川の伏流水を地下200mから組み上げたもの。特別なものは使っていません。昔から身近にあるもので、安心できる素材です。」
比翼鶴酒造の酒造りは、少数精鋭で行います。
少ない人数で、安定した供給を続けることは可能なのでしょうか?
「私や従業員の誰かが欠けて供給が止まることのないよう、営業も事務も全ての従業員が酒造りのノウハウを持っており、みんなが造り手です。昔は人の手がかかっていた作業も、最近は機械で効率よく作業することができるようになりました。おかげさまで、少ない人数でも安定した供給を続けられています。」
100年以上続く基本の製法に忠実でありながらも、時代の変化に沿い、作業の外注や機械の導入も取り入れます。しかしコストを抑えるために、味に妥協することはありません。
「お客様に手にとっていただきやすい価格と供給を実現できるよう、酒造りをする上での変なこだわりや作業の無駄は省いていきたいと考えています。同じ価格帯のお酒なら、絶対負けないという気持ちで酒造りをしています。」
これまで全国規模のPRを行なった経験がないという銘酒「比翼鶴」。現在のお客様のほとんどが地元の方だといいます。
「こだわろうと思えば、希少な原料を取り寄せて特別なお酒を造ることもできるでしょう。しかし私たちが一番造りたいお酒はやはり、この地で100年以上親しまれてきた「日常に寄り添うお酒」です。これからも地元の方々に変わらない味を楽しんでいただくことはもちろん、より多くの方々により良いお酒を手頃な価格で味わっていただく機会を増やしたいと思っています。」
特に日本酒に馴染みがない若い方々に、日本酒の楽しみ方から伝えていきたいと語る二ノ宮さん。昨今、通信販売やSNSにも積極的に取り組み始めました。 銘酒「比翼鶴」は日々変化する日本酒文化の未来の展望に翼を広げ、より多くの人にその魅力を伝えるべく、今、大きく羽ばたこうとしています。