久喜多屋酒造の酒造りにおける原理原則とは、「清潔な環境を保つこと」。
これらは「こだわり」の前に「基本」であり「当たり前」。
安心してお酒を楽しんでいただくために、殺菌処理と日々の清掃・除菌を丁寧に行います。
蔵にとって最大のライバルは、昨年の酒。
今年の酒がさらに良いものとなるように、造り手の経験と感覚に併せ、成分の分析データに基づく判断も取り入れるという
「職人技術」と「デジタル技術」の両面で微妙な調整を重ねます。
2013年、世界で最も影響力のあるコンペティションとして知られるIWCで「大吟醸 極醸 喜多屋」が最優秀賞を受賞しました。芳醇かつ透明感のある味わいが高く評価される喜多屋の酒造りに大切な二つのことがあります。
まずは、徹底した温度管理。東北のお酒がキリッと爽快である理由の一つは、その冷たい気候です。喜多屋では冷えた環境を維持するための「サーマルタンク」を導入し、暖かい季節でも冬の条件下で造るような酒造りを可能にしました。
そしてなによりも、造り手自身が楽しく造ること。造り手自身が楽しくないと、おいしい酒は造れないと言います。
酒は人が造るものであるからこそ、人が資本。若手社員や女性社員も無理なく働ける環境を蔵全体で目指しています。
お祝いの場はもちろん、法要の営みにも酒はつきもの。「楽しいときに飲む酒は楽しさを倍にさせ、悲しいときに飲む酒は悲しみを半分にしてくれる。」という言葉にあるように、喜多屋の日本酒が人々と慶びの日を共にし、時には慰めに寄り添う姿は、造り手のみなさんにとっての誇りであり、また喜びでもあります。
おすすめを尋ねたところ、「酒を我が子のように想い育てているので、我が子の中でどの子が良いかなんて決められません。」とのこと。「もちろんお客様のご予算やシーンに合う酒をお勧めはいたしますが︙」と、その声色は物腰やわらかでありながらも、これまで杜氏として酒造りに惜しみない愛情を注いできた情熱の深さが感じられます。
人々の生き方や働き方が目まぐるしく変化する昨今、人々の暮らしの中での酒の在り方もまた、変化しています。
2022年7月より新杜氏として就任する山崎さんは、これまで約200年積み重ねてきた蔵の伝統に敬意を払いつつも、現代に馴染むような新しい酒の価値観も受け入れ、蔵も変化していきたいと語ります。
山崎さん:「特に若い方の間で日本酒はとっつきにくく、硬いイメージがあると言われます。よく『日本酒に合う、おすすめのつまみはありますか?』と聞かれるのですが、これは『日本酒を買うなら、酒に合う料理を用意しなきゃ』と力んでしまう方も多いのではないかと思うんです。」
「私としてはそんなに力まずに、好きなように楽しんでほしいと思っています。私自身、スナック菓子をつまみながら日本酒を飲むのが好きなんです。料理が主役で、日本酒は引き立て役というのももちろん間違いではありませんが、より多くの人に楽しんでもらうという点では、日本酒が主役になってもいい。人それぞれの生活や好みに合わせた日本酒の楽しみ方があるという点も、これからたくさんの方に伝えていきたいですね。」
喜多屋には若い社員や女性社員も多く、その一人ひとりが考えたアイデアや、抱えている悩みなどにしっかり目を向けて、今後の酒造りにも販売にも活かしていきたいと山崎さんは考えています。未来に老舗酒造が提案する、新しい日本酒の楽しみ方にも期待しています。