酒粕はなぜ板状なの?板状の酒粕の便利な使い方って?
- 2017年12月27日
- テーマ:コラム
酒粕は、健康や美容に効果があることが分かり注目を集めている食材の一つです。商品として店頭に並ぶときには、板状のもので売られている場合がありますが、なぜそのような形をしているのでしょうか。また、板状の酒粕を料理に使う場合、利用しやすいのでしょうか。
今回は板状の酒粕ができた理由や、その使い方などについて解説します。
酒粕はどうして板状になっているの?
日本酒は、まず、米を発酵させて「もろみ」を造ります。もろみは酒と酒粕が混じり合った状態の物質ですが、上槽(じょうそう)というもろみを搾る作業によって酒と酒粕に分離されます。上槽は、具体的には「ヤブタ」と呼ばれる機械によってもろみを圧搾するため、搾りカスである酒粕は板状になるというわけです。
酒粕を板状にした板粕の使い方
板状になった酒粕は「板粕(いたがす)」と呼ばれますが、その使い方について説明します。
板粕の溶かし方
板粕を使って料理をする場合、まず板粕を溶かす必要がありますがここで手間取ってしまうケースもあるようなので、うまい溶かし方についてご紹介します。
ぬるま湯を使う
鍋に入れた水を加熱し、30℃~40℃のぬるま湯を作ります。その中に適当な大きさにちぎった板粕を浸し2時間程度放置すると、板粕は軟らかくほぐれた状態になります。このときの板粕と水との分量比は、だいたい1対5にすればよいでしょう。
電子レンジを使う
板粕100gを所定の容器に入れラップをして、電子レンジで600W×40秒で加熱すると軟らかくなります。
ミキサーを使う
ミキサーに適当な大きさにちぎった板柏を入れ、ぬるま湯を加えて作動させます。するとペースト状になった酒粕が出来上がり、扱いやすくなります。
板粕を練粕にすると濃厚な味になる
板粕を所定のタンクの中に入れて踏み固め、空気を抜いた状態で4か月程度置くと板粕は軟らかくなります。これは、米麹が酒粕中のデンプンを糖に分解する糖化作用を起こすためで、酒粕は軟らかく味が濃厚になります。この状態の酒粕は「練粕(ねりがす)」と呼ばれます。
酒処(どころ)として知られる山形県酒田市では、酒粕を日常的に調味料として使っているそうです。その際に使われるのは練粕ですが、それは軟らかいので扱いやすいということと、長く寝かせたことによってミネラルやアミノ酸が板粕に比べ多く分泌され旨みがあるためです。
板粕を使った料理レシピ
次に、板粕を使った料理をご紹介します。
板粕を焼くだけ
買ってきた板粕をそのまま焼いて食べるだけですが、甘い香りが漂い喉の奥にほんのりとした酸味を感じて絶品です。作り方は以下になります。
<材料>
板粕(好みで適量)、三温糖またはグラニュー糖(好みで適量)
<作り方>
①板粕よりもひと回り大きめのサイズに切ったアルミ箔の上に、板粕を乗せる
②板粕の上に三温糖またはグラニュー糖をまんべんなく振りかける
③オーブントースターに入れる
④1000W×2~3分で加熱。砂糖が溶け、板粕が膨らんで焦げ目が徐々に付いてくる
⑤全体的に焦げ目がついた時点で完成。焦げ過ぎないようにトースターの前で様子をチェックする
板粕を載せたピザトースト
ピザトーストにすると手軽に板粕を食べることができます。忙しい朝食時にさほどの手間もかからないのでおすすめです。
<材料>(1人分)
食パン(1枚)、板粕(好みで適量)、ピザソース(好みで適量)、マヨネーズ(好みで適量)
ピーマン(1/2)、タマネギ(1/8)
<作り方>
①食パンにピザソースをまんべんなく塗る
②①の上にスライスしたタマネギとピーマンを載せる
③②の上に適度な大きさにちぎり取った板粕を載せ、マヨネーズを少量かける
④オーブントースターで加熱し、全体的に焦げ目がついたら完成
板粕のてんぷら
板粕はてんぷらにするとチーズのような濃厚な味と食感が味わえ、酒の肴としても合うスナック菓子のような料理に仕上がります。
<材料>
板粕(2枚)、海苔(1帖)、米粉(大さじ4)、水(大さじ2~3)、菜種油(適量)、塩・コショウ(好みで適量)
<作り方>
①板粕を長さ10cm×幅5cm程度の大きさに切る
②①に水を付け海苔を巻きつけて、包み込む
③②をキッチンバサミなどで長さ5cm×幅1cm程度の食べやすい大きさに切り分ける
④米粉をボールなどの容器に入れ水で溶かす
⑤③を④に入れて、③の表面がうっすらと白くなる程度に米粉を塗布する
⑥菜種油を1cm程度入れたフライパンを加熱して油温が170~180℃になるように調整する
⑦⑤を⑥に入れて表面がきつね色になるぐらいに揚げる
⑧⑦で上がった板粕をキッチンペーパーで油を切り、コショウと塩で味付けて完成
まとめ
酒粕を板状にした板粕は、スーパーやコンビニエンスストアでも簡単に手に入れることができます。今回ご紹介した料理レシピは比較的簡単に作れて板粕の美味しさを引き出す内容になっていたと思います。ぜひ、一度試してみてはいかがでしょうか。
酒粕は、含まれる栄養素が美容や健康に良い効果をもたらすということで、近年注目されています。ただ、食事から摂取する場合、調理によって熱を加えるケースが多くその過程で栄養素の一部が失われることもあるでしょう。
そのように考えると、酒粕は、なるべく熱を加えず買ってきたそのままの生の状態で体に摂り入れるほうが、酒粕本来の効能を十分に発揮させることができそうです。
とはいえ、生のままの酒粕には独特の風味があるので、苦手な方も多いかもしれません。
そこで、酒粕をできるだけ生そのままの形に近い状態で食べるにはどのようにすればよいか、また、加熱によってどの程度栄養素が損なわれてしまうのかなどについて解説します。
酒粕はそのまま生で食べるのが一番?
酒粕の効能をもっとも有効に引き出すには、どのような形で酒粕を食べればよいでしょうか。まずは、酒粕の効能から見て行くことにしましょう。
これだけある酒粕の効能
酒粕は、以下のような有用な栄養素を含みさまざまな効能を示します。
・タンパク質が豊富
タンパク質は、筋肉や内臓、骨など人体の主要な構成部位を作る基となったり、代謝を促進する働きがありますが、酒粕には豊富に含まれています。特に注目されるのは、レジスタントプロテインと呼ばれるタンパク質で、胃で消化されずに腸に届き食物に含まれる油分や脂質を吸収し排泄されます。そのため、ダイエット効果が高いタンパク質といえるでしょう。
・体を調整するさまざまビタミン類が豊富
酒粕に含まれる酵母菌から、多くのビタミン類が生産されます。B1は、気持ちをリラックスさせ、体の成長に関係しているビタミンです。B2は髪や肌、目などを丈夫にし、B5は疲れを解消し免疫力を高める働きをするビタミンです。また、B6は神経の炎症を鎮静化するビタミンといわれています。
・ミネラル類、食物繊維が豊富
マグネシウムや亜鉛、カリウムなどミネラルも豊富です。しいたけの1000倍も含まれているといわれる食物繊維ですが、レジスタントプロテインと一緒にデトックス効果を示し健康促進に寄与しています。
熱を加えると一部の栄養素が失われる?
調理の際の加熱によって壊れてしまう栄養素としては、酵母菌や一部のビタミンが考えられます。特に酵母菌は、生きたまま腸まで届いてこそ効能を発揮するので、酵母菌の効能を利用したいのであれば酒蔵からの直販による生のペーストタイプの酒粕を、そのままで食べるとよいでしょう。
加熱しても残る栄養素
加熱しても残る栄養素としては、ミネラルや食物繊維、一部のビタミン類などがあります。また、ビタミンB群は熱に弱いとされていますが、加熱されたとしても30%~50%は壊れず残留し体に吸収されるといわれています。
スーパーやコンビニエンスストアなどで入手できるブロック状や板状の酒粕は、商品化される過程で加熱処理が施されている場合が多く、栄養価は生のものよりも落ちます。ただ、それでも多くの有用な栄養素は残っているので、そのような酒粕であっても入手しやすさを考えると利用価値は大いにあるといえるでしょう。
生の酒粕をそのままで食べるには
熱を加えずに生のままの酒粕を食べたいという場合には、調理に多少の工夫が必要になります。一つの手段としては、豆乳やヨーグルト、牛乳などに混ぜて飲料として利用する方法があります。その場合、酒粕の形態は粉末状のものがよいのかペースト状のものがよいのか、また、味はどのようなものがよいのかなど利用しやすさや自分の味の好みに合わせて銘柄を選ぶとよいでしょう。
加熱してでも酒粕は食べたほうがよい?
たとえ一部の栄養素が失われたとしても、酒粕を食べることで得られる恩恵は大きいでしょう。なので、ストレスを感じながら無理して生で食べるくらいなら、加熱が必要だとしても素直に調理して美味しくいただくほうが健康や美容にとっても良いかもしれません。
食物繊維やミネラルなど、熱を加えるとしても失われずに残る栄養素も多くあるので、酒粕を食べることを食生活の中で習慣づけることが大切です。そうすることで、酒粕の栄養素を継続的に体に取り込むことができるようになり、美容や健康に良い効果を及ぼすことが期待できるでしょう。
まとめ
酒粕はその豊富な栄養素から、健康や美容にとってさまざまな効能が期待できる万能の食材といえるかもしれません。できれば、酒粕に含まれる栄養素を全て吸収するために、生の酒粕そのままで体に取り込みたいところです。ただ、その点に厳密になってしまう余り、ストレスを感じながら食べるのであれば、本末転倒です。
確かに、加熱することによって酒粕に含まれる栄養素の一部は失われてしまいますが、それでも多くの栄養素は残っており、酒粕を食べることで得られるメリットは大きいといえます。無理をして生で食べるのではなく、熱を加えることになっても調理して美味しく食べることで酒粕を食べることが習慣化しやすくなるでしょう。